コウジは地味に6才だった…。 えーっと私と11歳差?それでもあり過ぎだと思うけど。「すまない!サヤカにはおそらくコウジが高校に入るまで、『S』を演(や)ってもらいたいと思う」「それなんだけど…母さんにはもう伝えたんだけど……言いにくいなぁ」「まさかっ…サヤカに変な虫がついたのか?」 変な虫って何よ?私だって彼氏の一人くらい欲しいわよ!誰も好き好んで独り身でいるわけじゃないわ!「そうじゃないわよ」 母さんがため息交じりで現れた。「サヤカは将来的に書家になりたいんですって。いいじゃない?最近は自分がなりたいものもわからずにニートって若者が多いのに、サヤカは立派だと思うわよ」「うっ、母さんが言うなら…」 父さんは相変わらず母さんに弱いなぁ。コウジが高校に入るまではあと8,9年?だと私はえーと、今17だからぁ。げっ、25,6才じゃないの?「父さん、私は25,6才まで『S』をやるの?」「書家になりたいんだろ?二十歳くらいでフェードアウトさせる。その代わりと言ってはなんだが、サヤカの書家としての姿の動画をアップしようと思う。どうだ?」 うーん、それなら年齢=彼氏ナシって事はなさそうだし、書家も出来そうだし、知名度も上がりそうだからオッケーかな?「動画がどうこうってのは師事しようと思ってる人との話し合いによるかな?堅物だったら、メディアは完全にシャットアウトな人だし」「そうか。それは大変だな。本社に掛け合って、動画投稿OK、顔出しOK、メディアOKの書家を探してもらおうか?」「そこはさぁ、やっぱり自分の好みの文字を書く人に師事したいのよね。自分でなんとかアクセスするわよ。ダメな時は父さんに頼る事にする」「そうか、わかった。いやぁ、子供子供だと思ってたのに、随分としっかりした子になっているんだなぁ」 何よ!自分だって結構、いやかなり好き勝手に高校・大学と生活してたの知ってるんだから! さて、私はこの文字が気に入ってるからとりあえずメールで連絡を取ってみよう。 離島での自給自足が原則?無理。次! 動画に投稿できるほどの達人なのか?ってバカにするのもほどほどにしてほしいわよ。投稿するのは自由じゃない。父さんのどうでもいい書なんてプレミア価格で500万近くの値がついたって聞いたけど?はぁー、時代錯誤すぎてイライラする。次! 投稿はいい。何故
今日は心に余裕があるなぁ。男バージョンでも撮ろうかな?…父さんに撮ってもらうんだけど。「サヤカの男装かぁ。うーん、ハスラーやる?」「ハスラーって何?」「ビリヤードする人。着崩した感のあるスーツで、次々とボールをポケットに落としていく。サラリーマンのアフターファイブ的な感じで」「ポケットに落とす?窃盗?」「あー、違う違う!ビリヤード台の穴の事を『ポケット』っていうんだ。で、1番から順番に歌いながら9番まで落としていく。カメラ目線は挑発的というか、挑戦的な感じで。「何でそんな姿勢でビリヤードって姿勢もありだ。参考までに昔、俺がやったDVDを見ろ」 へ~。なるほどね~。こりゃ、必要ないでしょって姿勢で打ってたりする。視聴者のためかな? 歌は昔の洋楽でいいかな?その方が雰囲気に合うし。 っていうかさぁ、何でこの家って何でもアリなの?「それは父さんもわからない。ボルダリング施設もPCで編集する場所も衣装を作成する場所もなんでもござれだ!」 本当になんでもあるのよねー。そして、ビリヤード台もあると。台っていうかその周りの施設全部。雰囲気からして、ビリヤードするお店だよね…。「スーツ着たけど、これでいい?」「着崩し過ぎだ!」 父さんによる修正がされた。「露出度が下がったんじゃない?」「サヤカはむやみやたらに露出をするんじゃない!」 ……自分は露出しまくってたクセに。 ま、父さんがプロデューサーだから言う事聞いてますけどね。******翌日の教室、女子の黄色い叫びが聞こえる。「昨日の『S』様見た?めっちゃ色気。スーツを着崩した感がイイよね!」「あれでビリヤードも上手いからすごいよ」「だよね!歌は上手いし、色気~!!」「『S』様は女かもしれないんだぜ?」「男かもしれないじゃん!」 私に色気ってあったんだ。「升田、感想なしか?」「ああ、男だし、脚がなかったからな」 脚かい! 今度はイライラするから女バージョン! 何でだろう?女バージョンだとストレス解消になるんだよね~。「サヤカ、なんか希望は?」「イライラするから、女バージョン!」「やっぱイライラすると女装がイイよなぁ。サヤカは違うけど」「あのバーでシャカシャカするやつやりたい!」「あれなぁ、地味に技術が必要でなぁ。やり方はネットで勉強しなさい。その間にいろいろ準
あの変態の息子が…あの脚フェチの変態の息子がまさかのサヤカの同級生とは…。 しかもサヤカ曰く『脚の英才教育』なるものを受けているらしい。何だよ…ソレ。まぁ、それによってサヤカが『S』だとわかったみたいだが。 銭湯にて、「田中さんですか?」と聞きまくっている不審な男を発見。ふむ、あの変態の面影がくっきりとあるな。 「サヤカの父親を捜しているなら俺だが?」そう言うと、升田なる男は俺の脚をしげしげと観察し始めた。「昔のような嫋やかな美しい脚は亡くなったのですね…」「大学の時に鍛えたからな。残念だったな。Tの脚が目当てだったのか?」 その後俺も10分くらい脚について熱く語られた。しかも裸で。 「当たり前ですが、うちには『T』様の動画DVDが全巻揃っています!」 それは、我が家の収入源となり、お買い上げありがとうございます。「まさか、まだお前の親父さん(俺の同級)、鼻血で救急車で運ばれてたりしないよな?」「ハハハッ、いやまさかぁ」 升田君は笑いながら言う。「俺と親父のセットで救急車ですよ~」 悪化……。俺も罪だよな。「お前の他の家族によりそのDVDを視聴禁止にしてもらった方がいいんじゃないか?」「そんなっ、あのDVDは俺と親父の活力源でもあるんですよ?冗談はやめて下さいよ~」 本気なんだが?お前らの体を心配して。「お前の母さんはよほどの脚の持ち主なんだろうなぁ」「いやいや、幼馴染ってやつですよ。『25まで互いに独身だったら~』とか約束してたっぽいです」 軽いな。 などと話していた。俺達の会話は周りの男たちにも波及したようだ。「ああ、わかるぜ。兄ちゃん。『T』様の脚は良かったなぁ。チラリズムというのか?もう少しで…って限界なところがまた男心を鷲掴みだよな」「そうですよね~」 俺はゆっくりと銭湯を堪能しよう。きっとサヤカも今頃堪能しているだろう。「そして、その脚自身も形がよくてよぉ。俺は保険会社に勤めてるんだが、あの脚に保険を掛けたいと思ってたんだよ。まぁ、若気の至りってやつか?」「保険、掛けたかったですよね。わかります!傷の一つでも国家の損失って感じです」「兄ちゃん!」「オジサン!」 大丈夫か?新しい扉が開かれようとしてないだろうな?「今はよぉ『S』様ってのが出てきただろ?その脚に俺は今度こそ保険を掛けたい!」
「お父さん、升田君に私が『S』ってバレた。ゴメンなさい」「誰だ?升田という馬の骨は?」「いつも行く寿司屋の子。なんか、‘脚’でバレた。升田君のお父さんってお父さんの脚見て鼻血で救急車で運ばれた人だよ!」「マジか?俺はそんな奴が握った寿司を‘うまい’と食っていたのか…。自己嫌悪だな」同級生の実家が何やってるかも知らなかったんだ…。普通にボッチの趣味で『T』様やってたんだなぁ。「升田君は『脚について』英才教育受けてるって豪語してた」「そっかぁ。あの変態ならやりかねんな。で、バレた。と?」「誠に申し訳ありません。升田君は黙っててくれるって言ってた。あと、父さんの生足みたいとも言ってた」「はぁ?俺の生足?当時(高校時代)よりも鍛えられたから、期待には応えられないって伝えてあげて。それはちょっと申し訳ないかな?さ、今日は男装をしてもらう」「私、地味に男装好きなんだよね?女子がキャーとか言ってるの?「私なんだけどー?」とか思うー」「ああ、それは高校時代の俺だな。俺の脚で鼻血出してるのを見て、「俺だけど?」とか思ってた」「親子だね」「だな?で、今日着るのはバーテンダーの格好だ。最後に口説いてもらうコースターにメッセージを添えて」「未成年なんだけど?」「そんなの父さんはいろいろやった。バーテンダーだろうと、バーカウンターで酔った感じのOLもやった。未成年の男子高校生が!よって気にするでない!」「了解!」ムーディーな音楽を口ずさみ、ラストにコースターで口説いた。翌日は女子が騒いでいた。「いやーん、口説かれたい!」口説きたくない。「『S』様は指もキレイなのねー。カウンターにコースターを出す指先まで色っぽくていい感じだった♡」そうなんだ。指にも気を付けよう。きちんとハンドクリームとか塗った方がいいかな?今まで放置しながら生活してたけど。ふと、升田君の方を見るとなんか含み笑いしてる。なにか不満?脚出てなかったからか?自宅ではコウジが成長を遂げようとしている。頑張って一人で歩こうとしていた。頑張れ弟よ!「父さんから聞いたわ~、あのお寿司屋さんが父さんの脚大好きだった変態の家なんでしょ?」「まぁ、そうです。私が『S』ってバレちゃったの。ゴメンなさい」「謝る事じゃないのよ、本来父さんが独自で家計を支えるべきものをサヤカが半分手伝ってるんだ
私の名前は田中地味子…ではなくて田中サヤカ。父さんが『T』様をしていた縁(?)で私はネットアイドル『S』として働いてます。うん、勤労学生だ。きちんと両親が養ってくれているので、趣味?バイト?なんかよくわからないけど、好きでやってます☆父さんは『T』様の時、超露出してたのに、私には露出させないようにしてるしわけわかんない!父さんが私のマネージャーというか、プロデューサーなのであんまり強く言えません。私も父さん同様に学校では地味な格好をしています。それで、周りからは『地味子』と呼ばれています。今日は女『S』様(最近世間ではそう呼ぶらしい)で撮影。「サヤカ!俺の時代と違って、今のスマホは360度見られるからね。怪我はないだろうな?」私はチャイナドレス姿で言った。「大丈夫よぉ。見て見て!似合う?扇子も持ったんだけど、どう?」「あ゛~!!そのスリット!!深くないか?」「既製服はこのくらい入ってた。そもそも!これ作ったの、父さんじゃん!」そう言うと、父さんは何も言えなくなった。曲は、90年代のポップスにしよう~!私は元気に長し目をしたり、脚をチラ見せしながら、歌った。うーん、本当は書家になりたいんだよなぁ。とはいえ、うちを父さんが支えてるからには父さんがプロデュースする子がいないとダメなんだよね。私の下のコウジが歌えるようになるまでは(しばらくは)ダメかなぁ?「雑念が感じられる。歌だけ後取りするぞ!」父さん厳しいなぁ。このなんだかよくわからない、元・父さんが一人暮らししてた部屋も役に立ってるけど、何なのこの部屋?翌日の教室の男子は煩かった。「どのアングルで見ても、『S』様は素晴らしい!」どのアングルでも見たんだよ?怖いなぁ。「あの脚最高だよな!」…脚フェチ。これが父さんがよく言う脚フェチか。確か親子で同じ高校って言ってたな。という事は、こいつの親父が父さんの脚を見て救急車で運ばれたのか…感慨深いなぁ。でも、こいつの家…。寿司屋じゃなかったっけ?いつも行く寿司屋(升だ屋)の大将が父さんの脚で救急車?…微妙。升田の目線が私の脚を捕らえた。「田中…ちょっと後で話がある」そう言われた。「升田―。地味子になんの用があるんだよ?」「うるせーな!ちょっとした用だよ」こうして私は校舎裏に呼び出された。リンチか?と思ったが、
俺は大パニック。何しろ、初めての相手だし。いや、俺の大学生活はタヤカ一筋だったが。結論「結婚してください」となった。結婚式とかは考えていないという超現実主義。今の俺の部屋は育児に向いていないから、賃貸にするなり売るなり(売れるのか?)なんかの施設にするなりだなぁ。スポンサーと要相談だな。金はたくさんある。外貨で貯金もしている。今後俺がすべきことは、タヤカの両親に挨拶だなぁ。タヤカ曰く、「おおらかな人達」だけど、デキ婚はありなのか?タヤカの両親。特に、お義父さんには殴られた。空手道場の師範だそうだ。超痛いんですけど?心の準備できてなかったし。お義母さんは「何をやってるんですか?仕方ないわねぇ?自分だって婚前交渉しまくりだったでしょうに。あらいやだ。子供の前で言う事じゃないわね。ほほほ」と、おおらかだった。「初孫は男の子と女の子とどっちかしらねー?」とも言っていた。ご両親には俺が『T』であることも話した。お義母さんは、「私、ファンなのよ。色気がいいわよね?そっかぁ男性なのね?で、高校生くらいだったから女装もしたのかしら?その時の色気もすごかったわー」とすぐに打ち解けられた。俺のサイン。署名みたいなものなんですけど?なんか芸能人みたいに難解なものは無いのです。あら?サインっていうより、署名とか記名みたいね。「私の手帳なのにタロウ君の手帳みたいになっちゃったわ」と仰っていた。お義父さんは、そんな姿を見てか「フン、芸能人みたいなことをやってたのか?しかも女装だと?けしからん!」「今は至る所鍛えてるわよ!」と、タヤカ。「ええ、動画をインターネットに投稿するということをしていたので、スポンサーもついてかなりの年収が今あります。もちろん、貯蓄もしています。いますぐにマンションくらいなら買えます」流石にお義父さんを黙らす要因となった。…認めてもらえるかな?「その資金とでタヤカさんとお腹の子は必ずや幸せにしてみせます。今後の活動は動画投稿ではなく、スポンサーに就職をして私の後を継ぐような人材を育てようと考えています」「でも、女声も男声も出る人材ってなかなか現れないんじゃ?」「育てるんです。現れるのを待っていたら、定年退職です」「フン、出来るもんならやってみろ。俺は孫が見たい」「もう、お父さんは素直じゃないんだから!いいですよ。いつでもこ